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オリンピックの聖火リレーも、わけ分からんことやっていて
最近、これといって書くことがないので、自分の書いた短編
のシナリオを載せます。
暇な人は、読んでいってくださいな。
Dream Maker(ドリーム メーカー)
弟=会社では部長から信頼されている。姉思いのしっかり者。
友=弟の友人。弟とは小学校からの付き合いで、弟の姉に可愛がって
もらっていた。
女=この世の人間ではないらしい。自分で、Dream Maker (ドリーム メーカー)
と言っている。
姉=弟とその友人をよく面倒見ていた。しかし、5年前に交通事故で他界した。
部=弟とその友人の勤める会社の部長。頭がバーコードになっている。
場面 − 昼食に、ジュースを飲みながら、ベンチに座っている弟と友人
弟 なんだか近頃、疲れが取れないんだよな。
友 年のせいだよ。
弟 ここ2日くらい、同じような感じですっきりしないんだけど。
友 そんなもんだよ。俺なんか毎日、書類の整理の繰り返しでさ、残業だって
サービス残業みたいなもんだよ。
弟 みんな、大差はないな。
友 毎日、同じ時間まで会社にいて、部屋に帰ったら風呂に入って飯を食べて
あとは寝るだけ… そのうえ、安い給料だし。
弟 のんびりと、温泉でも行ってみたいな。
友 ああ。でも、そのための時間も金もない。
弟 そういうことだな。
友 こんなんじゃ、デートもできない。
弟 それ以前の問題として、相手を見つける暇もない。
友 その通り。もう、手も足も出ない状況だ。
弟 あと1ヶ月もすれば年末年始の休みになるから、それまでの辛抱だな。
友 休みは待っていると、なかなか近づいてこない。時間がたつのが、長く感じ
るだけだよ。
弟 そうなんだよな。それでいて楽しい時間の過ぎるのは早くて、残業している
つらい時間は長くてしょうがない。
友 そうだな。10歳の子供の1年は、それまで生きてきた人生と比較して10分
の1だ。50歳の人の1年は、その人の人生の50分の1になる。だから、
長く生きている人ほど、1年の過ぎるのが早く短く感じるって何かの本に
書いてあったな。
弟 なるほどね。計算上は、そういうことだな。それでいくと、楽しいこと
ばかり経験してきた高齢の人は、一生があっという間だな。
友 ああ。とはいっても、1年365日はすべての人間に平等に与えられている
わけだから、1年経つのが早いかどうかは、結局はその人の感じ方しだい
だから。だけどやっぱり、楽しいことだけを長い時間過ごしていたいよな。
弟 楽しいことだけだったら、楽しいも何もわからないと思うけどな。つらいことが
あってこそ、楽しい時間がわかるってものだよ、そういう風にできてるん
だよ… ところで、何時になる?
友 (腕時計を見て) 12時40分。
弟 (友人の時計を見て) もう少し、時間があるな。おい、今日は27日だろ。
日付、直しておけよ。
友 直したんだけどな。古くなってきたせいか… 今朝も直したんだけど。なぜか
26日に戻るんだ。
弟 その時計、時間はあっているのか?電池、交換してみたらどうだ。
友 電池はこの前、自分で交換してみた。時間が狂わないから別に支障は
ないんだが。
弟 まぁ、そうだな。時間があっていれば問題ないか。
友 ああ。お前は相変わらず、時計してないんだよな。
弟 そうさ、普段は携帯持っていれば事足りるからさ。
(やや、間があってから)
友 ところで…… お姉さんがなくなってから、5年くらいか?
弟 25日で、丸5年たったよ。
友 早いもんだな。お墓参りには行った?
弟 いや、まだ行ってない。今週の土曜日に行くつもりだ。
友 土曜日のお墓参り、俺も行っていいか?
弟 かまわないさ。姉ちゃんは、お前も実の弟のように可愛がっていたからな。
お前が行けば姉ちゃんも喜んでくれるさ。
友 それじゃ、土曜日だな。
弟 ああ、予定としては午前中にな。
友 お前のお姉さんは、俺が小学校2年の時に引っ越して来て、学校で友達が
できるより先に、お姉さんが友達になってくれたからな。そんなにたつんだな、
もう5年か…
(友の腕時計を覗き込む)
弟 そろそろ、戻るとするか。
友 そうだな。また、つらい時間がまた始まるのか。午後も、書類の整理だ。
弟 なんだか、毎日同じことやっているよな、お前は。
友 俺だって、やりたくてやっているんじゃないからな。そういうお前も毎日会議
続きでよくやってられるな、感心するよ。会議中に眠くならないのか?
弟 社長の前で居眠りでもしたら、それで終わりだ。眠くならないように、胃が
悪くなるくらいに、コーヒーを飲んでるから。お前は気楽でいいよ。
友 コーヒーは、そんなに効くのか?お前に比べて確かに気楽だが、何の
楽しみもない。
弟 楽しみは自分で何か見つけろ。さあ、行くか…
(二人立ち上がって、下手にはける)
―――――――――――――― 暗転 ―――――――――――――
場面 − 仕事の終わったあとのオフィス
二人は仕事が終わり、書類を片付けたりしている
オフィスは西日が当たっているように、オレンジ色の光に照らされている
友 はぁーっ、今日も一日終わりました。
弟 やっと終わった… しかし、本当にここのところ、毎日まったく同じことを
やっている気がするんだけど。
友 それでもお前はまだいいよ。出張行くんだろ、息抜きできていいじゃないか。
弟 出張は仕事なんだからな。でもまあ、会社から離れられるのはいいけど。
自分で車を運転しての日帰りだから、ちょっとしんどい。
友 どこへ行くんだ?
弟 京都。
友 生八つ橋がいい。
弟 何がだ?
友 土産の話だが。(弟が手を出している) なんだ、この手は?
弟 買ってきてやるから、金よこせ。
友 そんなこと言うなよ。で、いつ行くんだ?
弟 28日の朝早く出て、28日の夜帰ってくる。それで29日の土曜日に姉ちゃん
の墓参りに行く。
(友人は壁にかかっているカレンダーを見る)
友 このカレンダーって、部長がいつも帰る時に×(バツ)印を付けて帰っているん
だろう。
弟 さっきも、付けて帰っていったが…
友 今日は26日なのに、なんで×(バツ)印が24日までしか付いてないんだ。
部長が、付けてから帰ったんだよな。
弟 日付が狂っているのが、お前の時計だけじゃないとでも言いたい口ぶりだな。
(友は弟のほうへ振り返る)
友 日付が狂っているというか、ここ2日くらい変な感じしないか?
弟 変な感じって、どんな?
友 だから、2日間同じことを繰り返しているような…
弟 それはお前が、毎日のように書類整理ばかりしているせいかもしれないが。
友 お前のほうは、どうなんだ。会議の内容とか、同じようなことやってないか?
弟 いままでも同じようなことばかり、議題になってたからな。ただ、お前と同じ
ように午前中の会議の時に、なんだかよく分からない違和感があって…
(友が机の上の新聞に目を留める)
友 おい、この新聞はいつのだ?
弟 それは、会議のあとに、部長から渡された。俺は、経済新聞なんか読まない
けど部長が少しは勉強しろって。
(友が新聞を手に取る)
友 部長は、2日前の新聞を持ってきたのか?
弟 今朝、駅で買ってきたって言ってたけどな…
友 じゃあ、日付が24日になっているのはどうしてだ?
(友が弟へ新聞を渡す)
弟 どうしてだって…(日付を見て)どうしてだ?
――――――――――間――――――――――――
友 あのな、昼飯食べている時、きのうの夕飯に何食べたか考えていたんだが、
思い出せない。
弟 忘れただけだろう。
友 お前は、きのうの夕飯そして、今日の朝飯何食べたか覚えているか?
弟 確か… (しばらく考え込む)うーん、記憶がはっきりしないな。今朝も何
食べたんだっけな?
友 そういうことだ。たぶん、思い出せないんじゃなくて、きのうの夕飯も今朝も
食べてないんだ、俺もお前もな。
弟 どういうことを言いたいわけだ?
友 お前さ、朝起きた記憶もないんじゃないか。朝、電車に乗って出勤してきた
こともさ。
弟 だから、何が言いたいんだよ!
(友は、机の引き出しを開けて弟に見えないように、カッターナイフを取り出す)
友 ちょっと、手を机の上に置いてみてくれ。
弟 何でだよ。
友 いいから、手を開いて机の上に置いてみろって。俺の考える、今の状況を
教えてやるから。
弟 (渋々、机に手を開いて置く)こうか?
友 それで、目を閉じてくれ。
弟 なんだよ、変なことはするなよ…
友 大丈夫だ、動くなよ。絶対、動かすなよ。
(友は弟の手の甲にカッターナイフを刺してみる)
弟 何をした… (目を開けて、カッターナイフが刺さっている手を見る)
げーっ、お前は!
友 痛くないだろ。(カッターナイフを抜いてみる) ほれ、血は…若干出てるけど。
弟 変なことするなって、言っただろ! どうゆうことだ!
友 現実だったら、痛いはずのものが痛くないわけなんだよ。分かるか?
弟 それが何なんだ、夢でも見てるって言いたいのかよ!
友 それだよ。俺たちは二人して夢の中にいるらしいな。夢だから痛くないし、
血は…若干出てるけど。
弟 そうなら、口で言えよ。行動で示さなくてもいいだろう。
友 分かりやすく説明したかった。
弟 まあ、夢を見ているなら、夢から目覚めれば終わるだけの話だが。しかし、
そうすると同じ夢の中にいることになるぞ、俺たちは。どっちの夢の中に
いるんだ。
友 同じ夢と言うよりは、夢を共有しているのかも。ファイル共有ソフトでファイル
を共有するみたいな。
弟 インターネットの世界だな、共有しているなんてさ。しかし、何でややこしい
ことになっているんだ?
友 でも、目が覚めればこのややこしいことも、終わるわけだ。
弟 確かに、それだけのことなんだけど… でも、なんでなかなか覚めないんだ?
(上手から女の声がする)
女 ちょっと待ってー。まだ、夢から覚めないでよねー!(つまづいて転ぶ)きゃっ!
友 誰だ?
(ひざをさすりながら、女が現れる)
女 どうもー、こんにちは。
弟 あんたは?
友 どこから、入ってきたんだ?
女 そっちから。 (窓のほうを指差す)
友 そっちは、窓しかないじゃないか。さては、ずっと隠れていたな!
女 違うわ、人聞きの悪いこと言わないでよ。わたしはこっちから入ってきても、
大丈夫なの。
友 なんでだよ!
女 わたし、人間じゃないし。
弟 はぁっ?
女 それに、あなたたちも気づいちゃったみたいだけど、今こうしているこの世界は、
夢の中なの。そういうことなんだから、別に変じゃないでしょ。
弟 そういう話なら、そうかもしれない。
友 おいおい、早くも納得したな、お前… それじゃ、そのことはいいとして、あんた
何者なんだ?
女 わたしのこと、憶えて…ないわよね。
弟 どこかで、会ったことが?
女 ふたりの夢の中に、何回か顔出したことあるんだけど、憶えてないのが普通
でしょうね。(少し、寂しげな表情)
弟 夢の中で会っている?
友 夢の中だけで。
女 そう、だってわたしは、現実の世界には存在していない者だからね。
友 それで結局、何者だと?
女 とくに名前はないけど、なんて言ったらいいかしらね… しいて言えば、
"Dream Maker"なんて言ってもらえるといいかも。
弟 "Dream Maker"…夢を作る?
女 あなたたちが今いるこの世界、この夢の世界もわたしが作ったの。わたしの
作品よ、すごいでしょ。(自慢気に胸を張る)
友 すごいんだか、どうなんだか分からないが…
弟 まあ、夢の中の出来事ということで理解しておこう。それならそれで、
聞きたいことがあるんだが…
女 なぁーに?
弟 この夢は、俺たちふたりのどっちの夢なんだ?二人して同じ夢を見ている
のか? そうだとしたら、まったく同時進行の夢っていうことになるよな。
女 (弟のほうを指して)基本的に、あなたの夢よ。それをこのお友達の夢と
くっつけたから、共有しているって感じよね。
友 なぜ、そんなことをしたんだ?
女 頼まれたからよ。
友 夢を共有させるようにか?
女 共有させたのは手段よ。(弟のほうを向き) あなたを助けるように、頼まれた
からよ。
弟 … 俺を?
女 そう、あなたのお姉さんから「弟を助けて欲しい」って、頼まれたから。
弟 姉ちゃんからだって!姉ちゃんは、5年前に交通事故で…
女 もちろん、知っているわよ。お姉さんが話してくれたから。お姉さんは、
あなたたち二人のことが心配で、亡くなった後も見守っていたの。それで、
あなたの命を救って欲しいって、頼まれたんだから。
弟 俺の命を… それは、俺が死ぬような目に、遭うっていうことなのか?
女 28日に出張で京都へ行くわよね、自分で車を運転して。
弟 そうさ、経費削減てことで新幹線ダメだって、バーコードが言うから。
女 バーコード?
弟 部長の頭がバーコード。
女 なるほどね。それで車で行く予定になっているのね。
友 朝早く出て、その日のうちに帰ってくる。
弟 それで、俺に生八つ橋を買ってくることになっている。
女 あっ、そう。でもその出張にこの人が行っても、生八つ橋を食べることは
できないわよ。
友 なんで?
女 京都から帰ってくるときに、高速道路で発生する玉突き事故に巻き込まれて、
この人が死んじゃうから…って、お姉さんが言ってた。
弟 俺が事故で死ぬ?
女 あなたのお姉さんは、この世の人ではないわけで、あなたの未来が見えた
らしいわ。
弟 姉ちゃんと知り合いだったのか。
女 いいえ、わたしは現実の世界以外を動き回っているから、この世の者で
ないお姉さんとばったり会ったの。
友 こいつを助けるための、夢なんだ。
女 引き止めておく手段として使っているの。夢を見続けていることで、時間を
止めておくような感じかな。
弟 同じ日々を繰り返しているように思えたのは、同じ夢を見続けていた
からか?
友 新聞の日付が、変わっていなかったのもそのため?
女 そういうこと、同じパターンにしてみただけ。他にも色々なパターンはあった
けどね。
友 とにかくそれで、危険を知らせてくれていたんだ。
女 もう少し早く来るつもりだったんだけど、わたしも結構忙しい身でね。
でも、危なかったわ。
弟 何が?
女 二人して、この世界が夢だって気づいたからよ。
弟 それが?
女 つまり、夢だと確信してしまったら、そのしばらく後に夢から覚めてしまうから、
その前にあなたたちに会う必要があったのよ。この夢から覚めたら、次に
またわたしが夢を作っても、すぐにそれと気がついて、夢で引き止めておく
ことができないでしょうから。
友 こいつの命を救うためだということはわかるが、俺には何の関係があるんだ。
女 お姉さんはあなたも小さいときから、本当の弟のように可愛がってくれていた
でしょう。もしこの人がいなくなったら、あなたは悲しみに耐えられないで
しょうから、それを心配してあなたのことも含めて頼まれていたの。だから
夢を共有なものにしたの。
友 そうだったのか…
女 二人のことを心配して、ずっと見ていてくれたのよ。
弟 姉ちゃんは、どこにいる?
女 この場に来ることができれば来たいと言っていたけど、どうかしらね。この
世の者でないのに、無理してこの世にとどまっていたから、もうエネルギー
が無かったみたいだし。
弟 エネルギーってなに?
女 亡くなったお姉さんが、この世にとどまっているには、大変なエネルギーが
必要なの。それに、わたしが今回の件を引き受ける謝礼として、お姉さん
からエネルギーをもらったから、残りわずかなエネルギーでまだこの世に
とどまっていられるかどうか。いれば来るはずだけど…
弟 ずっと俺たちのことを、心配していてくれてたんだ。
友 優しいお姉さんだったからな…
弟 しかし、出張に行かないわけにはいかないんだ、どうすればいいんだ?
女 そのことは大丈夫、手は打ってあるわ。
弟 どんなこと?
女 それはね…
(上手、弟の背後から姉が現れる)
友 おい、あれは…
弟 えっ(振り向く) 姉ちゃん!?
友 お姉さん!
姉 二人とも、久しぶりね。
弟 姉ちゃん…
友 お姉さん…
姉 せっかく会えたんだけど、わたしはもうこの世から離れないといけないの。
だから、こういう風に現れることができるのは、これが最初で最後よ。
でも、あなたたちがわたしのことを思いの中にとどめていてくれる限り、
その思いが私の形となって夢の中に現れることはできるから。
(姉は、弟と友人それぞれの方に手を置く)
(弟と友人が涙ぐんでいる、それを見た女も少し涙ぐむ)
弟 今まで、見守っていてくれたんだ。
姉 あの人に会えてよかったわ。そうでなければ、あなた(弟)を失うところだった。
あなた(弟)を失うことも、それを悲しむあなた(友人)も見たくはなかった、
だから、あの人にお願いしたの。
弟 ありがとう、姉ちゃん…心配かけたくないから、俺は泣かないよ。
姉 多少は成長してくれたみたいね…二人にはいつまでも、助け合って生きて
いって欲しいから。
友 ありがとうございます。俺も泣きませんから。
姉 あなたのことはこの人と同じように、本当の弟のように思っていた、それは
これからも同じよ…仕事中に、あまり倉庫とかで昼寝とかしてサボってちゃ
だめよ。
友 それも見ていたんですか…(照れる)
姉 これからは危険な目に遭いそうだとしても、知らせてあげることができない
けど…
女 そのことは、まかせておいて。わたしが夢を使って、できる限りふたりを
サポートしてあげる。
姉 そんなこと、できるの?
女 わたしも久しぶりに、いい仕事したわ。最近はみんな、ろくでもない夢ばかり
見たがって…仕事のやりがいっていうものがなかったのよねー。
だけど、あなたたちのためにいい夢作りができてよかった。今回の仕事は、
長期サポート付きで引き受けたことにするから。わたしも忙しいんだけどね。
姉 ありがとう。そうしてくれるなら、わたしも安心だわ。
女 (弟と友人に向かって)ただし、わたしが夢を作るといっても、その内容は
あなたたちの心の思いに関係しているから。悪い思いを抱いていれば、
いい夢を提供することはできないからね。今回は二人とも、お姉さんを
思うがあったから、うまくいったけど、悪い思いがあったらダメー。 (手で
×印を作ってみせる)
弟 どういうこと?
女 例えば、人を蹴落としでも出世したいとか、世界征服をもくろむとか…
世界征服はないわね。とにかく、悪いことが心の中にあるとダメよ。
友 もし、悪いことが心にあったらどうなる?
女 とんでもないことになる、ような仕方で夢を見せてあげるわよ。(薄笑いをする)
友 とんでもないことって…
姉 今の世の中だと、いい思いだけを持って生きていくのは難しいかもしれないけど、
悪いほうには進まないで欲しいの。
弟 大丈夫だよ、姉ちゃん。
友 なるべく、良い道に進む方向でやっていきます。ちゃんと仕事もするようにします。
姉 (みんなに背を向けて)もう去らなくてはいけないみたいだわ。しかたないわね…
それじゃ、わたし行くから。
弟 ありがとう、姉ちゃん…
友 お姉さん、ありがとうございました…
姉 さようなら… 二人とも、とにかく生きていって…
弟 姉ちゃん…
(姉は上手にはけて行く)
――――――――――間――――――――――――
女 行っちゃったわね… それでは、わたしも用が済んだから、行くわ。二人とも、
お姉さんに心配かけないように、生きて行ってよね。
弟 命拾いしたよ。ありがとう、Dream Maker。
女 わたしが去ったら、あなたたちは夢から覚めるわ。
(上手にはける。その後、女の台詞だけが聞こえる)
女 それじゃ、またいつか会いましょうねー。(窓を開ける音)
ぎゃーーっ!(女が窓から落ちたイメージ)
友 おーい!(弟と友人が上手に駆け込む)窓から飛び出そうとして、落ちたんじゃ
ないのか。
弟 落ちた?
友 姿が見えないから、去って行ったみたいだな。あの人、大丈夫か?
弟 去って行ったのなら、そろそろ夢から覚めるのかな…
――――――――――――― 暗転 ――――――――――――
(暗転の中、目覚まし時計の音が鳴り響く)
場面 − 座って机に向かっている弟と友人。そこへ、部長が下手から現れる。
弟 おはようございます。
部 おはよう。(弟へ近づいて)あのな、明日の出張のことだが…
弟 はい?
部 お前が会うことになっている向こうの部長さんがな、夜中に寝ていたベットから
落ちて肋骨を折ってしまって、入院したということだ。
弟 ということは…
部 出張は延期になった。いつになるかは、分からんがな。
弟 分かりました。(友人と目を合わせて、小さくガッツポーズ)
部 それで…そのために予定が変わったから、今から、在庫チェックの応援に
行ってくれ。頼んだぞ。
弟 はい、それでは行ってきます。(弟は下手にはける)
(部長は友人に近づく)
部 終わったのか?
友 何がですか?
部 何がじゃないだろう、お前は書類の整理が終わったのか? まだまだ、
あるんだぞ。(部長、書類を友人の机の上に置く)年末年始の休みに
入る前に、終わらせておいてくれよ!
友 まだ、あるんですか…ああ、なんだかまだ夢の続きを見てるみたいだ。
(ため息をつく)
終わり
最近、これといって書くことがないので、自分の書いた短編
のシナリオを載せます。
暇な人は、読んでいってくださいな。
Dream Maker(ドリーム メーカー)
弟=会社では部長から信頼されている。姉思いのしっかり者。
友=弟の友人。弟とは小学校からの付き合いで、弟の姉に可愛がって
もらっていた。
女=この世の人間ではないらしい。自分で、Dream Maker (ドリーム メーカー)
と言っている。
姉=弟とその友人をよく面倒見ていた。しかし、5年前に交通事故で他界した。
部=弟とその友人の勤める会社の部長。頭がバーコードになっている。
場面 − 昼食に、ジュースを飲みながら、ベンチに座っている弟と友人
弟 なんだか近頃、疲れが取れないんだよな。
友 年のせいだよ。
弟 ここ2日くらい、同じような感じですっきりしないんだけど。
友 そんなもんだよ。俺なんか毎日、書類の整理の繰り返しでさ、残業だって
サービス残業みたいなもんだよ。
弟 みんな、大差はないな。
友 毎日、同じ時間まで会社にいて、部屋に帰ったら風呂に入って飯を食べて
あとは寝るだけ… そのうえ、安い給料だし。
弟 のんびりと、温泉でも行ってみたいな。
友 ああ。でも、そのための時間も金もない。
弟 そういうことだな。
友 こんなんじゃ、デートもできない。
弟 それ以前の問題として、相手を見つける暇もない。
友 その通り。もう、手も足も出ない状況だ。
弟 あと1ヶ月もすれば年末年始の休みになるから、それまでの辛抱だな。
友 休みは待っていると、なかなか近づいてこない。時間がたつのが、長く感じ
るだけだよ。
弟 そうなんだよな。それでいて楽しい時間の過ぎるのは早くて、残業している
つらい時間は長くてしょうがない。
友 そうだな。10歳の子供の1年は、それまで生きてきた人生と比較して10分
の1だ。50歳の人の1年は、その人の人生の50分の1になる。だから、
長く生きている人ほど、1年の過ぎるのが早く短く感じるって何かの本に
書いてあったな。
弟 なるほどね。計算上は、そういうことだな。それでいくと、楽しいこと
ばかり経験してきた高齢の人は、一生があっという間だな。
友 ああ。とはいっても、1年365日はすべての人間に平等に与えられている
わけだから、1年経つのが早いかどうかは、結局はその人の感じ方しだい
だから。だけどやっぱり、楽しいことだけを長い時間過ごしていたいよな。
弟 楽しいことだけだったら、楽しいも何もわからないと思うけどな。つらいことが
あってこそ、楽しい時間がわかるってものだよ、そういう風にできてるん
だよ… ところで、何時になる?
友 (腕時計を見て) 12時40分。
弟 (友人の時計を見て) もう少し、時間があるな。おい、今日は27日だろ。
日付、直しておけよ。
友 直したんだけどな。古くなってきたせいか… 今朝も直したんだけど。なぜか
26日に戻るんだ。
弟 その時計、時間はあっているのか?電池、交換してみたらどうだ。
友 電池はこの前、自分で交換してみた。時間が狂わないから別に支障は
ないんだが。
弟 まぁ、そうだな。時間があっていれば問題ないか。
友 ああ。お前は相変わらず、時計してないんだよな。
弟 そうさ、普段は携帯持っていれば事足りるからさ。
(やや、間があってから)
友 ところで…… お姉さんがなくなってから、5年くらいか?
弟 25日で、丸5年たったよ。
友 早いもんだな。お墓参りには行った?
弟 いや、まだ行ってない。今週の土曜日に行くつもりだ。
友 土曜日のお墓参り、俺も行っていいか?
弟 かまわないさ。姉ちゃんは、お前も実の弟のように可愛がっていたからな。
お前が行けば姉ちゃんも喜んでくれるさ。
友 それじゃ、土曜日だな。
弟 ああ、予定としては午前中にな。
友 お前のお姉さんは、俺が小学校2年の時に引っ越して来て、学校で友達が
できるより先に、お姉さんが友達になってくれたからな。そんなにたつんだな、
もう5年か…
(友の腕時計を覗き込む)
弟 そろそろ、戻るとするか。
友 そうだな。また、つらい時間がまた始まるのか。午後も、書類の整理だ。
弟 なんだか、毎日同じことやっているよな、お前は。
友 俺だって、やりたくてやっているんじゃないからな。そういうお前も毎日会議
続きでよくやってられるな、感心するよ。会議中に眠くならないのか?
弟 社長の前で居眠りでもしたら、それで終わりだ。眠くならないように、胃が
悪くなるくらいに、コーヒーを飲んでるから。お前は気楽でいいよ。
友 コーヒーは、そんなに効くのか?お前に比べて確かに気楽だが、何の
楽しみもない。
弟 楽しみは自分で何か見つけろ。さあ、行くか…
(二人立ち上がって、下手にはける)
―――――――――――――― 暗転 ―――――――――――――
場面 − 仕事の終わったあとのオフィス
二人は仕事が終わり、書類を片付けたりしている
オフィスは西日が当たっているように、オレンジ色の光に照らされている
友 はぁーっ、今日も一日終わりました。
弟 やっと終わった… しかし、本当にここのところ、毎日まったく同じことを
やっている気がするんだけど。
友 それでもお前はまだいいよ。出張行くんだろ、息抜きできていいじゃないか。
弟 出張は仕事なんだからな。でもまあ、会社から離れられるのはいいけど。
自分で車を運転しての日帰りだから、ちょっとしんどい。
友 どこへ行くんだ?
弟 京都。
友 生八つ橋がいい。
弟 何がだ?
友 土産の話だが。(弟が手を出している) なんだ、この手は?
弟 買ってきてやるから、金よこせ。
友 そんなこと言うなよ。で、いつ行くんだ?
弟 28日の朝早く出て、28日の夜帰ってくる。それで29日の土曜日に姉ちゃん
の墓参りに行く。
(友人は壁にかかっているカレンダーを見る)
友 このカレンダーって、部長がいつも帰る時に×(バツ)印を付けて帰っているん
だろう。
弟 さっきも、付けて帰っていったが…
友 今日は26日なのに、なんで×(バツ)印が24日までしか付いてないんだ。
部長が、付けてから帰ったんだよな。
弟 日付が狂っているのが、お前の時計だけじゃないとでも言いたい口ぶりだな。
(友は弟のほうへ振り返る)
友 日付が狂っているというか、ここ2日くらい変な感じしないか?
弟 変な感じって、どんな?
友 だから、2日間同じことを繰り返しているような…
弟 それはお前が、毎日のように書類整理ばかりしているせいかもしれないが。
友 お前のほうは、どうなんだ。会議の内容とか、同じようなことやってないか?
弟 いままでも同じようなことばかり、議題になってたからな。ただ、お前と同じ
ように午前中の会議の時に、なんだかよく分からない違和感があって…
(友が机の上の新聞に目を留める)
友 おい、この新聞はいつのだ?
弟 それは、会議のあとに、部長から渡された。俺は、経済新聞なんか読まない
けど部長が少しは勉強しろって。
(友が新聞を手に取る)
友 部長は、2日前の新聞を持ってきたのか?
弟 今朝、駅で買ってきたって言ってたけどな…
友 じゃあ、日付が24日になっているのはどうしてだ?
(友が弟へ新聞を渡す)
弟 どうしてだって…(日付を見て)どうしてだ?
――――――――――間――――――――――――
友 あのな、昼飯食べている時、きのうの夕飯に何食べたか考えていたんだが、
思い出せない。
弟 忘れただけだろう。
友 お前は、きのうの夕飯そして、今日の朝飯何食べたか覚えているか?
弟 確か… (しばらく考え込む)うーん、記憶がはっきりしないな。今朝も何
食べたんだっけな?
友 そういうことだ。たぶん、思い出せないんじゃなくて、きのうの夕飯も今朝も
食べてないんだ、俺もお前もな。
弟 どういうことを言いたいわけだ?
友 お前さ、朝起きた記憶もないんじゃないか。朝、電車に乗って出勤してきた
こともさ。
弟 だから、何が言いたいんだよ!
(友は、机の引き出しを開けて弟に見えないように、カッターナイフを取り出す)
友 ちょっと、手を机の上に置いてみてくれ。
弟 何でだよ。
友 いいから、手を開いて机の上に置いてみろって。俺の考える、今の状況を
教えてやるから。
弟 (渋々、机に手を開いて置く)こうか?
友 それで、目を閉じてくれ。
弟 なんだよ、変なことはするなよ…
友 大丈夫だ、動くなよ。絶対、動かすなよ。
(友は弟の手の甲にカッターナイフを刺してみる)
弟 何をした… (目を開けて、カッターナイフが刺さっている手を見る)
げーっ、お前は!
友 痛くないだろ。(カッターナイフを抜いてみる) ほれ、血は…若干出てるけど。
弟 変なことするなって、言っただろ! どうゆうことだ!
友 現実だったら、痛いはずのものが痛くないわけなんだよ。分かるか?
弟 それが何なんだ、夢でも見てるって言いたいのかよ!
友 それだよ。俺たちは二人して夢の中にいるらしいな。夢だから痛くないし、
血は…若干出てるけど。
弟 そうなら、口で言えよ。行動で示さなくてもいいだろう。
友 分かりやすく説明したかった。
弟 まあ、夢を見ているなら、夢から目覚めれば終わるだけの話だが。しかし、
そうすると同じ夢の中にいることになるぞ、俺たちは。どっちの夢の中に
いるんだ。
友 同じ夢と言うよりは、夢を共有しているのかも。ファイル共有ソフトでファイル
を共有するみたいな。
弟 インターネットの世界だな、共有しているなんてさ。しかし、何でややこしい
ことになっているんだ?
友 でも、目が覚めればこのややこしいことも、終わるわけだ。
弟 確かに、それだけのことなんだけど… でも、なんでなかなか覚めないんだ?
(上手から女の声がする)
女 ちょっと待ってー。まだ、夢から覚めないでよねー!(つまづいて転ぶ)きゃっ!
友 誰だ?
(ひざをさすりながら、女が現れる)
女 どうもー、こんにちは。
弟 あんたは?
友 どこから、入ってきたんだ?
女 そっちから。 (窓のほうを指差す)
友 そっちは、窓しかないじゃないか。さては、ずっと隠れていたな!
女 違うわ、人聞きの悪いこと言わないでよ。わたしはこっちから入ってきても、
大丈夫なの。
友 なんでだよ!
女 わたし、人間じゃないし。
弟 はぁっ?
女 それに、あなたたちも気づいちゃったみたいだけど、今こうしているこの世界は、
夢の中なの。そういうことなんだから、別に変じゃないでしょ。
弟 そういう話なら、そうかもしれない。
友 おいおい、早くも納得したな、お前… それじゃ、そのことはいいとして、あんた
何者なんだ?
女 わたしのこと、憶えて…ないわよね。
弟 どこかで、会ったことが?
女 ふたりの夢の中に、何回か顔出したことあるんだけど、憶えてないのが普通
でしょうね。(少し、寂しげな表情)
弟 夢の中で会っている?
友 夢の中だけで。
女 そう、だってわたしは、現実の世界には存在していない者だからね。
友 それで結局、何者だと?
女 とくに名前はないけど、なんて言ったらいいかしらね… しいて言えば、
"Dream Maker"なんて言ってもらえるといいかも。
弟 "Dream Maker"…夢を作る?
女 あなたたちが今いるこの世界、この夢の世界もわたしが作ったの。わたしの
作品よ、すごいでしょ。(自慢気に胸を張る)
友 すごいんだか、どうなんだか分からないが…
弟 まあ、夢の中の出来事ということで理解しておこう。それならそれで、
聞きたいことがあるんだが…
女 なぁーに?
弟 この夢は、俺たちふたりのどっちの夢なんだ?二人して同じ夢を見ている
のか? そうだとしたら、まったく同時進行の夢っていうことになるよな。
女 (弟のほうを指して)基本的に、あなたの夢よ。それをこのお友達の夢と
くっつけたから、共有しているって感じよね。
友 なぜ、そんなことをしたんだ?
女 頼まれたからよ。
友 夢を共有させるようにか?
女 共有させたのは手段よ。(弟のほうを向き) あなたを助けるように、頼まれた
からよ。
弟 … 俺を?
女 そう、あなたのお姉さんから「弟を助けて欲しい」って、頼まれたから。
弟 姉ちゃんからだって!姉ちゃんは、5年前に交通事故で…
女 もちろん、知っているわよ。お姉さんが話してくれたから。お姉さんは、
あなたたち二人のことが心配で、亡くなった後も見守っていたの。それで、
あなたの命を救って欲しいって、頼まれたんだから。
弟 俺の命を… それは、俺が死ぬような目に、遭うっていうことなのか?
女 28日に出張で京都へ行くわよね、自分で車を運転して。
弟 そうさ、経費削減てことで新幹線ダメだって、バーコードが言うから。
女 バーコード?
弟 部長の頭がバーコード。
女 なるほどね。それで車で行く予定になっているのね。
友 朝早く出て、その日のうちに帰ってくる。
弟 それで、俺に生八つ橋を買ってくることになっている。
女 あっ、そう。でもその出張にこの人が行っても、生八つ橋を食べることは
できないわよ。
友 なんで?
女 京都から帰ってくるときに、高速道路で発生する玉突き事故に巻き込まれて、
この人が死んじゃうから…って、お姉さんが言ってた。
弟 俺が事故で死ぬ?
女 あなたのお姉さんは、この世の人ではないわけで、あなたの未来が見えた
らしいわ。
弟 姉ちゃんと知り合いだったのか。
女 いいえ、わたしは現実の世界以外を動き回っているから、この世の者で
ないお姉さんとばったり会ったの。
友 こいつを助けるための、夢なんだ。
女 引き止めておく手段として使っているの。夢を見続けていることで、時間を
止めておくような感じかな。
弟 同じ日々を繰り返しているように思えたのは、同じ夢を見続けていた
からか?
友 新聞の日付が、変わっていなかったのもそのため?
女 そういうこと、同じパターンにしてみただけ。他にも色々なパターンはあった
けどね。
友 とにかくそれで、危険を知らせてくれていたんだ。
女 もう少し早く来るつもりだったんだけど、わたしも結構忙しい身でね。
でも、危なかったわ。
弟 何が?
女 二人して、この世界が夢だって気づいたからよ。
弟 それが?
女 つまり、夢だと確信してしまったら、そのしばらく後に夢から覚めてしまうから、
その前にあなたたちに会う必要があったのよ。この夢から覚めたら、次に
またわたしが夢を作っても、すぐにそれと気がついて、夢で引き止めておく
ことができないでしょうから。
友 こいつの命を救うためだということはわかるが、俺には何の関係があるんだ。
女 お姉さんはあなたも小さいときから、本当の弟のように可愛がってくれていた
でしょう。もしこの人がいなくなったら、あなたは悲しみに耐えられないで
しょうから、それを心配してあなたのことも含めて頼まれていたの。だから
夢を共有なものにしたの。
友 そうだったのか…
女 二人のことを心配して、ずっと見ていてくれたのよ。
弟 姉ちゃんは、どこにいる?
女 この場に来ることができれば来たいと言っていたけど、どうかしらね。この
世の者でないのに、無理してこの世にとどまっていたから、もうエネルギー
が無かったみたいだし。
弟 エネルギーってなに?
女 亡くなったお姉さんが、この世にとどまっているには、大変なエネルギーが
必要なの。それに、わたしが今回の件を引き受ける謝礼として、お姉さん
からエネルギーをもらったから、残りわずかなエネルギーでまだこの世に
とどまっていられるかどうか。いれば来るはずだけど…
弟 ずっと俺たちのことを、心配していてくれてたんだ。
友 優しいお姉さんだったからな…
弟 しかし、出張に行かないわけにはいかないんだ、どうすればいいんだ?
女 そのことは大丈夫、手は打ってあるわ。
弟 どんなこと?
女 それはね…
(上手、弟の背後から姉が現れる)
友 おい、あれは…
弟 えっ(振り向く) 姉ちゃん!?
友 お姉さん!
姉 二人とも、久しぶりね。
弟 姉ちゃん…
友 お姉さん…
姉 せっかく会えたんだけど、わたしはもうこの世から離れないといけないの。
だから、こういう風に現れることができるのは、これが最初で最後よ。
でも、あなたたちがわたしのことを思いの中にとどめていてくれる限り、
その思いが私の形となって夢の中に現れることはできるから。
(姉は、弟と友人それぞれの方に手を置く)
(弟と友人が涙ぐんでいる、それを見た女も少し涙ぐむ)
弟 今まで、見守っていてくれたんだ。
姉 あの人に会えてよかったわ。そうでなければ、あなた(弟)を失うところだった。
あなた(弟)を失うことも、それを悲しむあなた(友人)も見たくはなかった、
だから、あの人にお願いしたの。
弟 ありがとう、姉ちゃん…心配かけたくないから、俺は泣かないよ。
姉 多少は成長してくれたみたいね…二人にはいつまでも、助け合って生きて
いって欲しいから。
友 ありがとうございます。俺も泣きませんから。
姉 あなたのことはこの人と同じように、本当の弟のように思っていた、それは
これからも同じよ…仕事中に、あまり倉庫とかで昼寝とかしてサボってちゃ
だめよ。
友 それも見ていたんですか…(照れる)
姉 これからは危険な目に遭いそうだとしても、知らせてあげることができない
けど…
女 そのことは、まかせておいて。わたしが夢を使って、できる限りふたりを
サポートしてあげる。
姉 そんなこと、できるの?
女 わたしも久しぶりに、いい仕事したわ。最近はみんな、ろくでもない夢ばかり
見たがって…仕事のやりがいっていうものがなかったのよねー。
だけど、あなたたちのためにいい夢作りができてよかった。今回の仕事は、
長期サポート付きで引き受けたことにするから。わたしも忙しいんだけどね。
姉 ありがとう。そうしてくれるなら、わたしも安心だわ。
女 (弟と友人に向かって)ただし、わたしが夢を作るといっても、その内容は
あなたたちの心の思いに関係しているから。悪い思いを抱いていれば、
いい夢を提供することはできないからね。今回は二人とも、お姉さんを
思うがあったから、うまくいったけど、悪い思いがあったらダメー。 (手で
×印を作ってみせる)
弟 どういうこと?
女 例えば、人を蹴落としでも出世したいとか、世界征服をもくろむとか…
世界征服はないわね。とにかく、悪いことが心の中にあるとダメよ。
友 もし、悪いことが心にあったらどうなる?
女 とんでもないことになる、ような仕方で夢を見せてあげるわよ。(薄笑いをする)
友 とんでもないことって…
姉 今の世の中だと、いい思いだけを持って生きていくのは難しいかもしれないけど、
悪いほうには進まないで欲しいの。
弟 大丈夫だよ、姉ちゃん。
友 なるべく、良い道に進む方向でやっていきます。ちゃんと仕事もするようにします。
姉 (みんなに背を向けて)もう去らなくてはいけないみたいだわ。しかたないわね…
それじゃ、わたし行くから。
弟 ありがとう、姉ちゃん…
友 お姉さん、ありがとうございました…
姉 さようなら… 二人とも、とにかく生きていって…
弟 姉ちゃん…
(姉は上手にはけて行く)
――――――――――間――――――――――――
女 行っちゃったわね… それでは、わたしも用が済んだから、行くわ。二人とも、
お姉さんに心配かけないように、生きて行ってよね。
弟 命拾いしたよ。ありがとう、Dream Maker。
女 わたしが去ったら、あなたたちは夢から覚めるわ。
(上手にはける。その後、女の台詞だけが聞こえる)
女 それじゃ、またいつか会いましょうねー。(窓を開ける音)
ぎゃーーっ!(女が窓から落ちたイメージ)
友 おーい!(弟と友人が上手に駆け込む)窓から飛び出そうとして、落ちたんじゃ
ないのか。
弟 落ちた?
友 姿が見えないから、去って行ったみたいだな。あの人、大丈夫か?
弟 去って行ったのなら、そろそろ夢から覚めるのかな…
――――――――――――― 暗転 ――――――――――――
(暗転の中、目覚まし時計の音が鳴り響く)
場面 − 座って机に向かっている弟と友人。そこへ、部長が下手から現れる。
弟 おはようございます。
部 おはよう。(弟へ近づいて)あのな、明日の出張のことだが…
弟 はい?
部 お前が会うことになっている向こうの部長さんがな、夜中に寝ていたベットから
落ちて肋骨を折ってしまって、入院したということだ。
弟 ということは…
部 出張は延期になった。いつになるかは、分からんがな。
弟 分かりました。(友人と目を合わせて、小さくガッツポーズ)
部 それで…そのために予定が変わったから、今から、在庫チェックの応援に
行ってくれ。頼んだぞ。
弟 はい、それでは行ってきます。(弟は下手にはける)
(部長は友人に近づく)
部 終わったのか?
友 何がですか?
部 何がじゃないだろう、お前は書類の整理が終わったのか? まだまだ、
あるんだぞ。(部長、書類を友人の机の上に置く)年末年始の休みに
入る前に、終わらせておいてくれよ!
友 まだ、あるんですか…ああ、なんだかまだ夢の続きを見てるみたいだ。
(ため息をつく)
終わり
